ユマニチュードとは
ユマニチュードは、フランスのイヴ・ジネスト(Yves Gineste)とロゼット・マレスコッティ(Rosette Marescotti)両氏によって考案されました。
背景:考案者のジネストとマレスコッティ両氏はもともと体育学を専門としていて、看護師に腰痛予防を指導するときに感じた問題意識からこのユマニチュードが生まれました。その看護師のケアでは、全介助で行っていた人物が実は声をかければ自分で動くことのできる人でした。
体育学では、人間は動くものであり、身体を動かすことで健康になれるいう考えがあります。立てる、歩ける能力をケアによって失わせてしまっているとしたら、それは人間の尊厳を傷つけているのではないかという疑念から、「亡くなるその日まで立つ」という理念を掲げ、患者が自ら動くことを支援する技術の開発に取り組んでいきました。それがユマニチュードです。
ユマニチュードの技術(4つの柱)
1.「見る」技術の中心は視線を合わせることにあります。視線を合わせることで、コミュニケーションを成立させるとともに,自分が認識されているという安心感を与えることができます。
2.「話す」ときには優しく穏やかな声で話しかけ、肯定的な言葉や励ましの言葉を多用します。このように話すことで、愛情や優しさが表現され、尊厳を認めていることを伝えることができます。
3.「触れる」ときに重要なのは、痛みを与えないこと、心地よさを持続させることです。具体的な技術としては、広く、柔らかく、ゆっくり、なでるように、包み込むように触れます。
4.「立つ」では、立位や歩行をできる限り多く日常のケアに取り入れます。それにより、筋力の低下を防ぎ、身体機能を維持向上させるとともに、人として生きる喜びや自尊心を高めます。
ユマニチュードの技術(5つのステップ)
「5つのステップ」は、4つの柱を使ってケアをする手順です。
1.「出会いの準備」の目的は、来たことを知らせ、相手の許可を得ることです。許可を得るときに待つことによって、ケアを受ける人の選択を尊重します。
2.「ケアの準備」の目的は関係性を築くことです。見る技術、話す技術、触れる技術を使ってケアを受ける人に対する敬意を示し、信頼関係を築きます。
3.「知覚の連結」は、ケアを実施する時間です。ケアの実施中は、見る技術、話す技術、触れる技術を駆使してコミュニケーションを図り、肯定的なメッセージを伝えるようにします。
4.「感情の固定」では、ケアの終了後すぐにその場を離れるのではなく、ケアを肯定的に振り返ることでケアの満足感を高めます。
5.「再会の約束」では、次回のケアの約束をします。これにより、ケアを受ける人は安心感を持ち、継続的なケアに対する信頼を築くことができます。
ユマニチュードの哲学
「ケアをする人とは?」
ユマニチュードでは、ケアをする人を「健康に問題のある人に対して、回復を目指し、それができなければ現在の機能を保ち、それもできないときには最後まで寄り添う人」と定義します。
誰が何をするかではなく、どのような水準のケアを設定し、どのように関わるかを重視する思想があります。
「人とは何か?」
ユマニチュードがケアにおいて「人間らしさ」を重視していることを反映しています。ケアにおいてその「人間特有の特性」を最も重視します。「人間特有の特性」の例は、食事において栄養を摂取するという行為だけでなく、食事の色合いや形、季節感、一緒に食卓を囲み会話をすることなど、単に栄養摂取のためだけではないところに、人間らしさを感じます。
参考文献:大島寿美子 「科学的」認知症ケアとしてのユマニチュード 介護福祉学 31 (1), 47-53, 2024 日本介護福祉学会 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jarcw/31/1/31_47/_pdf/-char/ja
NPI評価とは
認知症患者のBPSDの頻度と重症度および介護者の負担度を数量化することができる神経心理検査です。「妄想」「幻覚」「興奮」「うつ」「不安」「多幸」「無関心」「脱抑制」「易怒性」「異常行動」の10項目からなり、その後、「夜間行動」「食行動」の2項目が追加され、計12項目で構成されています。
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