かながわ高齢者福祉研究大会に行ってきた。

かながわ高齢者福祉研究大会に参加しに、パシフィコ横浜へ行きました。大会では神奈川県内の各施設での日頃の取り組みを研究して発表をする施設がたくさんありました。ここでは、自分が聴いていて特に気になった言葉や内容について自分なりに調べて紹介しようと思います。
ハイパー・キューユー(アンケート調査)で、職員の力を引き出す
hyper-QU(ハイパーキューユー)とは
学校生活における児童生徒の満足感や意欲、学級集団の状態などを質問紙で測定する検査で、学校の風土を見える化するためのツールです。
①「学校生活意欲」、②「学級満足度」、③「ソーシャルスキル尺度」の3つの尺度から構成されていて、主に不登校やいじめ、学級崩壊などの問題の早期発見や、より良い学級集団づくりに活用されています。
このhyper-QUを施設の風土を把握するために応用している施設がありました。アンケート調査を通して現状を把握し、点数の低いところを改善しようと様々な取り組みをして開放性のある施設を目指していました。
また、CSは顧客満足度(目的、取り組みの結果)、EMSは従業員意欲満足度(HQUの分析を基にアプローチ)、OSは組織構造(透明性、開放性のある組織風土)、Pは生産性(生産性向上、ICTの活用など)として、CS=EMS(OS+P)の式を用いて、結果を出そうとしていました。この式を見ると、職員の意欲満足度がとても大切なことがわかりますね。
ユマニチュードの技法、実践評価
ユマニチュードは、フランスのイヴ・ジネスト(Yves Gineste)とロゼット・マレスコッティ(Rosette Marescotti)両氏によって考案されました。
背景:考案者のジネストとマレスコッティ両氏はもともと体育学を専門としていて、看護師に腰痛予防を指導するときに感じた問題意識からこのユマニチュードが生まれました。その看護師のケアでは、全介助で行っていた人物が実は声をかければ自分で動くことのできる人でした。
体育学では、人間は動くものであり、身体を動かすことで健康になれるいう考えがあります。立てる、歩ける能力をケアによって失わせてしまっているとしたら、それは人間の尊厳を傷つけているのではないかという疑念から、「亡くなるその日まで立つ」という理念を掲げ、患者が自ら動くことを支援する技術の開発に取り組んでいきました。それがユマニチュードです。
●ユマニチュードの技術
【4つの柱】
1.「見る」技術の中心は視線を合わせることにあります。視線を合わせることで、コミュニケーションを成立させるとともに,自分が認識されているという安心感を与えることができます。
2.「話す」ときには優しく穏やかな声で話しかけ、肯定的な言葉や励ましの言葉を多用します。このように話すことで、愛情や優しさが表現され、尊厳を認めていることを伝えることができます。
3.「触れる」ときに重要なのは、痛みを与えないこと、心地よさを持続させることです。具体的な技術としては、広く、柔らかく、ゆっくり、なでるように、包み込むように触れます。
4.「立つ」では、立位や歩行をできる限り多く日常のケアに取り入れます。それにより、筋力の低下を防ぎ、身体機能を維持向上させるとともに、人として生きる喜びや自尊心を高めます。
【5つのステップ】
「5つのステップ」は、4つの柱を使ってケアをする手順です。
1.「出会いの準備」の目的は、来たことを知らせ、相手の許可を得ることです。許可を得るときに待つことによって、ケアを受ける人の選択を尊重します。
2.「ケアの準備」の目的は関係性を築くことです。見る技術、話す技術、触れる技術を使ってケアを受ける人に対する敬意を示し、信頼関係を築きます。
3.「知覚の連結」は、ケアを実施する時間です。ケアの実施中は、見る技術、話す技術、触れる技術を駆使してコミュニケーションを図り、肯定的なメッセージを伝えるようにします。
4.「感情の固定」では、ケアの終了後すぐにその場を離れるのではなく、ケアを肯定的に振り返ることでケアの満足感を高めます。
5.「再会の約束」では、次回のケアの約束をします。これにより、ケアを受ける人は安心感を持ち、継続的なケアに対する信頼を築くことができます。
●ユマニチュードの哲学(考えかた)
「ケアをする人とは?」
ユマニチュードでは、ケアをする人を「健康に問題のある人に対して、回復を目指し、それができなければ現在の機能を保ち、それもできないときには最後まで寄り添う人」と定義します。
誰が何をするかではなく、どのような水準のケアを設定し、どのように関わるかを重視する思想があります。
「人とは何か?」
ユマニチュードがケアにおいて「人間らしさ」を重視していることを反映しています。ケアにおいてその「人間特有の特性」を最も重視します。「人間特有の特性」の例は、食事において栄養を摂取するという行為だけでなく、食事の色合いや形、季節感、一緒に食卓を囲み会話をすることなど、単に栄養摂取のためだけではないところに、人間らしさを感じます。
参考文献:大島寿美子 「科学的」認知症ケアとしてのユマニチュード 介護福祉学 31 (1), 47-53, 2024 日本介護福祉学会 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jarcw/31/1/31_47/_pdf/-char/ja
ユマニチュードの考え方について概要は何となく知っていたのですが、誕生した背景や哲学までは知らなかったので調べる機会ができて良かったです。実際の介護現場でも使えそうな技法であり、他の分野でも使うことができると思われる技法だと思いました。
また、この発表では実践評価として、「NPI評価」もしていました。
NPIとは
認知症患者のBPSDの頻度と重症度および介護者の負担度を数量化することができる神経心理検査です。「妄想」「幻覚」「興奮」「うつ」「不安」「多幸」「無関心」「脱抑制」「易怒性」「異常行動」の10項目からなり、その後、「夜間行動」「食行動」の2項目が追加され、計12項目で構成されています。
GIFT式介護技術を用いた移乗介助
GIFT理論とは
「区別して、差別せずに、選択する」という考え方を大切にしています。
つまり、GIFT理論は、「人それぞれ違って当たり前、違いを認め合い、尊重しよう」という考え方です。
GIFT式介護技術はこのGIFT理論の考えかたに基づいて、自身の骨格と介護をする相手の骨格を理解して身体操作を行い、自身にとっても介護を受ける側にとっても負担の少ない介護を行います。
GIFT式介護技術では、自分のことを知り(自己覚知)、他者との違いに気づき、違いにあったケア方法を選択できるようにします。
詳しくは、GIFT式介護技術で調べると講義のセミナーがあるみたいです。
産学民連携
産学民とは
地域の産業(企業)、学術(大学)、民間(市民)で連携をして新しい事業を開発することで、その地域の地域課題を解決しようと試みることです。
今回の大会で紹介されていたものは、その地区での高齢者率は高いが、大学が2つもある地区なため、若い人たちも集まる地域でした。そこで社会福祉協議会の人たちで、地域の大学や企業に声をかけ、地域で出ていた困りごとを解決しようとしていました。地区では住民からの動きが活発で色々な事業ができていたが、他の機関とも協力をすることでよりたくさんの事業ができていったみたいです。
流れだけ書くと簡単なように思いますがなかなか難しいことで、突撃して声をかけて、発信して仲間に引き入れたそうです。住民の努力もPRして協力を募集したようです。
他にも行政を引き入れた産学官民連携というのもあるようです。人口が減少していき、高齢化率が高くなる今日、どの機関でも協力して生活をしていくことが大切になりそうですね。
今回は以上で、高齢者福祉研究大会での気になった発表の紹介を終わりにします。
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